8 『ありさんのぎょうれつがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


昔、メキシコの美術館で「子供のための展覧会」を見た。
テーマは絵本だったが、展示がおもしろかった。
広くて天井の高い美術館の中に、子供のサイズに縮小した展示室が作られていた。
入り口も廊下も壁面も、子供にはピッタリのサイズ。
だから、彼らが見たい絵は彼らの目線に合っていた。大人は少し腰をかがめて見る。
天井もついていたから私は不思議の国アリスになったように感じた。

たしかに、子供の頃は地面に近い生活をしていた。だから犬とも同類だったのだ。
ありやバッタや石ころや四つ葉のクローバー、そして海では貝殻の美しさにうっとりできたのだった。
その中でも私のお気に入りはありの行列。
どこからどこへゆくのかが知りたくて、ずーっとながめていたことを思い出す。
そのうち行列を作らせたくなって、台所の砂糖壺までの道をつけたら、
いつも台所に立っていたキレイ好きのまさおばあさんは、ひっくりかえった。
エサをあげたのにと不思議な気持ちになった。