TITLE:はじめに
父の実家は、鮨屋でした。そんな環境で育った私は、祖母の昔ながらの手料理を食べ、母の台所の手伝いをするというのが日常でした。それは、季節の変化を敏感に取り入れた当時の「食」に囲まれていた幸運な環境だったと言い換えることができます。
現在は、毎朝の食事を作り、昼食は母の手作りを食べ、夕食は週のうち半分くらいを自分で作るといった、シンプルなもの。そこで私を助けてくれるのは、週2回分の主婦休業日に通う「しんとみ」。親方のヒロちゃんの手打ちそばが絶品のお店。
まずは「今日のおまかせコース」をお願いします。そして板前のソエちゃんの旬を取り入れた小皿に舌鼓を打ちながら、料理の話や下ごしらえのヒントが話題になり、実にたくさんの「食物語り」をしてきました。こんな日常を5年も続けているうちに、小皿の中味を胃袋に入れるだけではなく、記録に残したいと思うようになりました。
今はどこに行っても年中野菜が手に入る便利な時代。ただ引き換えに、蝉のなく暑い夏に、冷やしたきゅうりをほおばる旨さや、凍てつく冬にほかほかの大根で食道から暖をとるというような「旬の趣(おもむき)」が薄れてきたように感じます。
この連載では季節が巡る喜びと、昔祖母や父母に教えてもらった知恵の詰まった料理の作り方を思い出しつつ、日常の食卓にどうしても載せたいと願うレシピを私の絵と共に紹介します。料理人はソエちゃん、協力はヒロちゃんそして「しんとみ」です。
この連載のタイトルにした「DANDORI」という鳥をストーリーテラーに皆さんの食卓にも「食物語り」をお届けしたいと思いますのでお楽しみください。
TITLE:DANDORIとは?
●DANDORI
ダンドリは鳥である。
職人の魂の鳥と言われている。
ダンドリの機嫌が悪くなるのは、フィニッシュ地点までをイメージしないで、作業を始める時。そう、すべての仕事は、ダンドリの精神のあるなしで質が決定する。一度そっぽを向いたダンドリはすぐに飛んで行ってしまう。
ダンドリが好きなのは、考える人。挑戦する人。決して失敗するのを嫌がるわけじゃない。いつだってダンドリは過程を楽しめる人の味方。
ダンドリを飼うことは、自分を知ることにつながる。豊かな発想とダンドリ精神が、イメージされたものを創り出す。
●DANDORIを飼う前に
ダンドリレシピはの味つけは基本の割合にしています。料理を何度もつくって好みの味の分量はご自身で段取ってください。そして自分の段取りができたとき貴方はダンドリを飼い始めることになるのです。
TITLE:Spiritの作り方、七つのエッセンスと七つ道具
●Spiritの作り方
Spiritとは魂の事。ですがココでは「職人の魂」、転じて出汁のことをさします。本レシピに出てくるspiritの作り方をご紹介いたします。
1、おなべに水をはったら1升につき15gほどの割合で昆布を入れます。必ず水の段階から昆布を入れましょう。
2、弱火で30~40分かけて火を通しましょう。
3、次に強火にして沸騰する直前に昆布を引き上げてください。入れたまま沸騰させると雑味がでます。
4、昆布を取り出し沸騰させたら灰汁を取ります。
5、火を弱火に戻しひと息置いて荒熱をとったら、かつお節を二つかみ入れます。かつお節が沈んだら、すぐにこします。
6、Spiritの完成です。
●七つのエッセンス
本レシピで料理をする際に必要な七つエッセンスですので使いやすいように常備してください。
・砂糖
・塩
・酢
・しょうゆ(薄口と濃口があるとよいですね)
・酒
・みそ
・みりん
DANDORIのメジャー
レシピにでてくる1という分量はカレー用スプーン1杯分です。
ほかにも分量を決めていますので割合のメジャーとしましょう。
●七つ道具
・包丁とまな板
・なべ 大小
・フライパン
・ボウル
・ざる
・はしとヘラとスプーン
・すり鉢とすりこぎ