12 『トルコの宮殿』


©️Yoko Yamamoto


カオリはバナナを大広間につれていきました。
バナナは部屋中がチューリップ畑のようだと驚きます。
さてここからが、この本で一番不思議なところです。
この物語はチューリップのキューコンが主人公でしたから、ここまでは地味なトーンなのです。
チューリップと聞くと当然、あか、しろ、きいろの花をイメージしますが、
物語の後半、やっとチューリップの花が咲いたのです。
カオリの白い花。バナナの黄色い花が顔を出しました。
一年という時間が経過したのです。キューコンと花の姿がやっと描けました。

私はチューリップの芽生えを富良野のパン屋さんの庭で観察していました。
やわらかで透きとおるような若葉、
そしてその中に包まれていた緑色の花を愛しく見続けた日を思い出します。

花が咲いた報告をキューコンチョーは「ラーレさまー シンシアさまー」
とチューリップの妖精と女王様に呼びかけてなきました。