雛まつり

 

今年の桃の節句には、「とりかえばや物語」のお雛さまを飾ります。

昨日、友人からこんなメールが届き、あわてて「平安の姫君たち」を作品ケースから取り出した。

「源氏物語」が一千年紀を迎えた2008年、私は5人の姫君たちのポートレートを銅版画にした。その中に「とりかえばや物語」の男性的で活発な姫君と、女性的で内省的な若君を男装させ女装させてお雛さまにしたことがあった。

物語ではこのような姿で生きてゆく二人の日々の展開がまず楽しい。「とりかえばや」ーとりかえられたらよいのに というのは二人の父君が、彼らを見ていてつぶやいた嘆きだが、今もよくつぶやかれているようにも思う。無邪気に。

現代語訳をされた田辺聖子さんは「戦前にはこの物語を読むことが出来なかった」とあとがきの冒頭に書かれている。そして、「まずこのテキストは、世間になかった」こと、「たとえあっても当時の読み手が拒否反応をおこしたのではないか」と続けられていて、古典は時代によって読者の感じ方が異なるというおもしろさを伝えてくれた。

では今年、すでに本になっている、この奇想天外といわれた物語を、読んでみるのはいかがでしょうか。

山本容子

「山本容子の姫君たち himegimi@heian」

講談社 2009