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03月の記事一覧

TITLE:【Others】コラム アリスの世界の不思議

March 29.2025

コラム
アリスの世界の不思議

 

「アリスの世界」は、つぶやきでできています。アリスはつぶやきながら、世界をグニャリと歪めていく「現在進行形」のところが好きです。たとえば物語の冒頭、時計を持ったウサギを追いかけて、ウサギ穴にゆっくり(「ゆっくり」の上に強調の点4つ)と落ちてゆくアリスは、飼い猫のダイナにエサをあげてこなかったことに気づきます。洞窟には、ダイナのエサになるものはない。はずですが、アリスは洞窟にはコウモリが居ることを思い出し、コウモリはネズミに似ているので、ネコはコウモリを食べるかもしれない。と発想を飛ばすのです、この自分勝手に論点をずらし安心してゆく過程がつぶやきの面白さなのです。もうひとつ、アリスがズンズン大きく姿を変え、訪問した家が破裂しそうになり、エントツからトカゲのビルを弾き出してしまうシーンがありますが、ビルは結局地面にたたきつけられ失神してしまいます。「トカゲの失神シーン」は、描くにはもっとも難しかったのですが、失神した顔が描けた時、私もやったとつぶやきました。ビルの失神シーンさがしてね。

 

山本容子


「The poor little Lizard, Bill」2008年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 28×39.5cm

Category: Others
Posted by: lucas

TITLE:【Others】コラム 世界文学の玉手箱

March 14.2025

コラム
世界文学の玉手箱

 

ふと子供だったことを思い出すことがある。

昨年の11月13日に詩人谷川俊太郎さんが亡くなった。「あのひとが来て」という詩画集を作っていた頃を思い出し、彼の初詩集「二十億光年の孤独」を手に取る。この中から二篇の詩を選び絵を描いたのだった。ページをめくる。89ページ「ネロー愛された小さな犬に」の三遍を読み、手が止まった。

いつの間にか、ネロという犬が、ネロという少年に姿を変え、犬のパトラッシュが姿を見せた。心の冷たい世の中で貧しく生きる姿。雪の中の石畳の冷たさ。教会の中の大きな絵。雪の降りしきるクリスマスに、少年と犬が冷たくなっていた光景ーそのすべての冷たさを感じ取った私は、はじめて本を読みながら大きな声を出して泣いた。その本は「フランダースの犬」だった。
子供の頃に出会った物語は、いつもどこかにひょいと顔を出し、感情を揺さぶる。

 

山本容子


「にんじん Peil de carotte」1994年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 15×10cm


「ピノッキオの冒険 Le adventure di Pinocchio」1994年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 15×10cm

Category: Others
Posted by: lucas



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