『花』1999年 ソフトグランド・エッチング、グワッシュ / 紙 20×16cm  ©️Yoko Yamamoto


Artist's Notes:
波と舟人(ふなびと)が漕ぐ舟は、葛飾北斎の『富嶽三十六景』の中の「御厩川岸より両国橋夕陽見」(※左)という隅田川の絵から拝借したもの。遠景に富士山を描くことで、北斎が下敷きになっていることをより明らかにしている。今はこの富士山の見える位置に三角形の高層ビルが建っているのだけれど。ここで見ていただきたいのは、河岸の桜並木の下を散歩するルーカス(※右)。最後は立ち止まってこちらを見ている。中央の屋形船は、かつて飲んだり食べたりしながら船遊びをした時の思い出から描いた。そこにもルーカスの姿がある。音符は満開の桜の花にした。

    


桜を見ると「花」を鼻歌する。そう、「はるの—」の歌い出しの「の」を三度下げて、下のパートを歌う。
そして妹の顔を思い出して笑う。しあわせ。

この連載も終了。しりとりのように次の連載が浮かんだ。
1996年44歳の私は、絵本「おこちゃん」を出版して、東京五十景を描きはじめた。
その中の一景目が東京湾—屋形船。四十四景、隅田公園となっている。
隅田公園には桜並木と、今はなき、川沿いの喫茶店マリーナ。屋形船は今も水上を走っている。
絶版になった絵本「東京五十景」をお楽しみに。

山本容子



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