13 『テレビがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


応接間にはテレビが座っていた。
使っていない時は美しい布がかけられ、それを上げると観音開きのドアが開く。そしてテレビが出てくる。
午後になると近所の方々も少し集まってきて試合観戦となった。
相撲とレスリングの時は部屋は熱気を帯びていた。
皆テレビに向って声をかけたり、拍手をしたり、一体感がすごかった。
家族も集まるのでとても好きな時間だった。
ヒーローは若乃花と力道山。ライバルは胸毛の濃い朝汐と頭をかじるブラッシーだったかな。
この興奮した時間を過したおかげで、わたしはまたひとつ自分の芸を身につけたのだった。

力道山のユニフォームの黒いタイツをはいて、
その上から浴衣の帯にヒモを結んでもらい、若乃花のまわしを身につけた。
最強の出立ちを考えたわけだ。
当然上半身は裸んぼうなので、皆さんは笑ってくれたが、わたしがおんなの子なので、失笑だったのだと思う。
空手チョップをしながら相撲のまねをするおてんばなおんなの子の証明をした。