『雨降りお月』1999年 ソフトグランド・エッチング、グワッシュ / 紙 20×16cm  ©️Yoko Yamamoto


Artist's Notes:
ルーカスの表情がたまらない。何と悲しげなのだろう。まず月を見上げる。次に、花嫁さんに「行ってくるね」と言われてうなだれ、それでもとぼとぼ後ろをついていく。花嫁さんを追って雨が降りしきる戸外へ出たものの、置いてきぼりにされて、遠くなっているルーカス。しかし、黙ってはいなかった。走るのだ。それも全速力で。画面の右端から左端へと移動したルーカスは、「でもやっぱり追いかける!」とばかりに、最後は、シャラシャラシャンシャンと鈴の音を響かせながらひとりで馬に乗って嫁いでゆく花嫁さんを追ってゆくのだった。



空を見上げていた祖母が、明日は雨降りやね。と言った。空には丸い月がでていた。
が、すっきり、くっきりした月ではなくて、ボンヤリボヤけて浮かんでいた。
翌日は雨降りとなり、空を見て天気予報をする祖母がすごいと思った。
月の満ち欠けは美しい。それだけではない不思議な力に驚いたのだった。小学2年生の春休みのことだった。

去年の暮れ、空一面が白いフワフワの雲で一杯になったので、妹に写メールをしたら、
羊雲やね。雪降るよ。という返信。
祖母は妹にも空の不思議を教えていたと確信した。



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