「プラテーロとわたし」全曲を聴いて、体験して。

昨日、2021年10月24日の午後1時から午後4時半。この3時間半の間に、奇跡のような素晴らしい夢が実現した。

秋晴れの美しい山口県秋吉台国際芸術村のコンサートホールは満席。

スペインの詩人ヒメネスの「プラテーロとわたし」28編の散文詩には、テデスコの28曲のギター曲が作曲されている。そして私は28点の銅版画を制作した。その詩をギター演奏にのせて朗読する波多野睦美さんは、ギターを奏でる大萩康司さんの繊細な指先に応えることが出来るように詩の翻訳をした。言葉が弦に乗った。私の絵は、演奏するふたりの頭上に投影されて輝いた。曲に合わせて静かに動く映像はつつましく、曲にとけこんだように思えた。中川健一君の丁寧な指使いは、PCの上で画像を遊ぶ。

東京から来てくれた編集者の榊原宏通君は、この三つの要素がコンサートホールの空気を「詩」の「ことば」で埋めつくされる時間を体験してくれた。

音も映像も消えてしまうから、と。心して聴きましたとのことだった。改めて観客の皆様への感謝で一杯になった。

コンサートホールは、演奏が終了すると私の展覧会場になるので、展示は、まるでオーケストラピットのように譜面台に絵を置いて配置した。コンサートがはじまる前、私のプレトーク *「4 poems and Me」を銅版画の制作プロセスと共に話した。コンサートホールで展覧会がしたいという願いが叶ったのだった。

4 poems and Me」についてはまた発表したいと思います。

アンコールの「十一月の田園詩」の演奏の様子と、曲にのせて静かに変化する画像を見て下さい。

そうしてもし「プラテーロとわたし」の本を持っているなら、88pをひらいて「暖炉にくべる松の枝を運ぶ 規則正しく繊細で軽やかな」足どりのプラテーロをイメージして下さい。

そして「十二月を待っている野原に、謙虚で穏やかなロバの姿が、過ぎた一年の歳月にも似て神聖に見え始める」というヒメネスの声を聞き、CDをお持ちなら、ギター曲をかけながらの朗読をどうぞはじめて下さい。

夢は見なければ実現しない「ひとつのオブジェ」です。

 

最後にふたりが、振り向いています。プラテーロと見つめ会いました。

 

山本容子