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03月の記事一覧

TITLE:【Others】ブランクーシ 本質を象る

March 31.2024

Brancusi Carving the Essence


彫刻家ブランクーシ(1876-1957)の展覧会に行った。私は1985年に、彼の生家のあるルーマニアのホビタ村を訪れたことがあり、彼の生活が木を素材にした素朴な造形で囲まれていたことを知った。なので、今回は磨かれたブロンズ作品を中心に鑑賞してみたいと思った。なぜなら素朴さと洗練の間を行き来してみたかったから。


ブランクーシと犬のポレール

 


「レダ」は白鳥。レコード盤のような台に乗った光るブロンズ作品の水鳥は、回ると景色をとりこみ、光を発するだろうと想像する。意外に大きい。

 


同じく円盤に乗った「魚」。くるくる回ると音が聴こえてきそう。ブランクーシは魚をイメージした時、形やウロコなどの細部より先に泳ぐ姿を思い浮かべるという。川の流れ、川面にきらめく光と共に。


これらの鳥は離陸の角度を見せている。空を見上げ飛翔する瞬間を待つ。一方でブロンズの質量を持った鳥は、飛べそうに思えない。眼で像を追っていると浮かんだ姿が見えた。磨かれた姿は、時に透明になった。


パリのアトリエは、彼の作業場であると同時に展示場でもあった。時代を越えた作品が素材と共に彼と過ごした時間のなんと幸福なことだろう。

 

今回の展示でこのアトリエをテーマにした展示室の照明が素晴らしかった。内覧会だったので、運良くライティング・アーキテクトの豊久将三さんと出会い、今回の照明の新しさについて話をうかがった。(私とも2度仕事をさせていただいている)

正面から見るとブロンズ群はまったくフラットな光にとり囲まれていて、重量を失い空中に浮かんでいるようだ。後ろにまわり見ていくと、ブロンズ群は影と共に着地している。「飛翔」と「神秘」この二つの像を見せる磨かれたブロンズ作品こそ、彼が求めていた本質を飛翔させる方法ではないかと思った。

 

山本容子


ルカとポレールのぬいぐるみ。MUSEUM SHOPで買った。

Category: Others
Posted by: lucas

TITLE:【Others】安西水丸版画集『ONE DAY』について

March 27.2024

これは、硝酸銅液の色です。
先日のSwitch の下の階のRainy Day Bookstore & Cafeでのトークで、硝酸液を使ったエッチングの話をしました。
モチーフは、安西水丸さんの残した三枚の銅版について。これらを刷ってオリジナル本が誕生しました。
装丁に使ったのが、この色です。ONE DAYとタイトルを竹ペンで手画きしました。エッチング集には、ふさわしい色です。
山本容子

 

没後10年、安西水丸制作の銅版がアトリエで発見された。
果たしていつごろの作品か、なぜ銅版画を安西水丸は試みたのか、いくつかの謎が残った。
それを解き明かすべく版画家・山本容子の監修のもと、特装本として最初で最後の版画集が誕生。

安西水丸版画集『ONE DAY』

詳細はこちら

Category: Others
Posted by: lucas

TITLE:【Exhibition】「Au Passage 4人の個展 - 競馬場のパサージュにて」常設展示

March 25.2024

お知らせです。

 

「Au Passage 4人の個展 - 競馬場のパサージュにて」常設展示

 

京都競馬場のグランドオープンと、京都市立芸術大学の移転を記念して2023年11月に実施された美術展「Au Passage 4人の個展 - 競馬場のパサージュにて」の中から一部の作品を再構成して展示します。

会期:2024年4月以降の競馬開催日(通常土日、平日は観覧不可)

会場:JRA京都競馬場 ステーションサイド3階展示コーナー(京都市伏見区葭島渡場島町 32)

入場料:京都競馬場への入場料(詳細 HP)

 

 

嬉しいことに再展示されることになりました。

京都競馬場は美しい場所です。入場料は安いです。

是非、行楽のスケジュールに入れて下さいね。

今回は、昨年の秋の反対側の視点として、鏡の中を正体としました。

山本容子

Category: Exhibition
Posted by: lucas

TITLE:【Others】「春のみみずく朗読会」村上春樹×川上未映子に行ってきました

March 02.2024


昨夜は「春のみみずく朗読会」村上春樹×川上未映子に行ってきました。

会場は早稲田大学大隈記念講堂。春樹さんが最新の短編を朗読。俳優の小澤征悦さんが、春樹さんの第一作「風の歌を聴け」を朗読。この二つの物語は、約40年の時を経ている。春樹さんの声は力強くて、内容の少しヒョーキンに装った箇所は軽やかに、「ラジオのように」身近に物語がやってきました。

小澤さんはやはりプロの役者さんでした。ドルビーシステム搭載の映画館で映画を観ている気分になったのです。

川上さんの声は、少しハスキー。そして高音はクリア。流れるようなリズムで読みながら、時々頭に手をやったり、スカートを直しながら艶のあるのびやかな声が魅力的でした。

そして村治佳織さんのギターは、独奏で様々な感情を引き出してくれたあと、小澤さんの朗読の情景を浮かびあがらせてくれました。朗読の力に更に期待すると共に、音楽とのコラボレーションを楽しみたいと深く思った一夜でした。

朗読会の前には、春樹さんの図書館で「安西水丸さんの展覧会」をみました。今年は没後10年です。是非足を運んで下さい。今年の秋は、私の展覧会の企画中です。

山本容子

Category: Others
Posted by: lucas

TITLE:【Others】山本容子の平安の姫君たちシリーズをSHOPにアップしました!

March 01.2024

雛まつり

 

今年の桃の節句には、「とりかえばや物語」のお雛さまを飾ります。

昨日、友人からこんなメールが届き、あわてて「平安の姫君たち」を作品ケースから取り出した。

「源氏物語」が一千年紀を迎えた2008年、私は5人の姫君たちのポートレートを銅版画にした。その中に「とりかえばや物語」の男性的で活発な姫君と、女性的で内省的な若君を男装させ女装させてお雛さまにしたことがあった。

物語ではこのような姿で生きてゆく二人の日々の展開がまず楽しい。「とりかえばや」ーとりかえられたらよいのに というのは二人の父君が、彼らを見ていてつぶやいた嘆きだが、今もよくつぶやかれているようにも思う。無邪気に。

現代語訳をされた田辺聖子さんは「戦前にはこの物語を読むことが出来なかった」とあとがきの冒頭に書かれている。そして、「まずこのテキストは、世間になかった」こと、「たとえあっても当時の読み手が拒否反応をおこしたのではないか」と続けられていて、古典は時代によって読者の感じ方が異なるというおもしろさを伝えてくれた。

では今年、すでに本になっている、この奇想天外といわれた物語を、読んでみるのはいかがでしょうか。

山本容子

「山本容子の姫君たち himegimi@heian」

講談社 2009

 

Category: Exhibition
Posted by: lucas



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