TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年8月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年9月1日のテーマは「やわらかな身体知のマナー」恩田侑布子さんです。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年8月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年9月1日のテーマは「やわらかな身体知のマナー」恩田侑布子さんです。
13 『チューリップと王様』
©️Yoko Yamamoto
まずは「チューリップと王様」という物語を読んでください。
絵の中ではラーレが朗読してくれたことになっています。
子供の頃、叔母のヒザに頭をのせて、絵本をしっかりと持ち
「むかし、むかし」と叔母が読んでくれる物語が大好きでした。
叔母の声はだんだん物語の中のヒトやドウブツの声になっていきました。
大好きな場面は良く覚えているのに、
何度も同じ本を座布団と共に叔母に持っていったと母から聞きました。
カオリとバナナはキューコンのときから歩けましたね。
このページでは「歩けるチューリップの秘密」と
「王様はなぜさみしい顔をしていたのか」の理由を書いています。
昔、河合隼雄さんと絵本をテーマに対談したことがありました。
河合さんは、私の描いた「おこちゃん」という絵本を持って講演をして下さったそうです。
それはなぜか。河合さんは私の子供の頃の
「ヒミツをあかすエネルギー」が大好きだったからだとおしえてくださいました。
12 『トルコの宮殿』
©️Yoko Yamamoto
カオリはバナナを大広間につれていきました。
バナナは部屋中がチューリップ畑のようだと驚きます。
さてここからが、この本で一番不思議なところです。
この物語はチューリップのキューコンが主人公でしたから、ここまでは地味なトーンなのです。
チューリップと聞くと当然、あか、しろ、きいろの花をイメージしますが、
物語の後半、やっとチューリップの花が咲いたのです。
カオリの白い花。バナナの黄色い花が顔を出しました。
一年という時間が経過したのです。キューコンと花の姿がやっと描けました。
私はチューリップの芽生えを富良野のパン屋さんの庭で観察していました。
やわらかで透きとおるような若葉、
そしてその中に包まれていた緑色の花を愛しく見続けた日を思い出します。
花が咲いた報告をキューコンチョーは「ラーレさまー シンシアさまー」
とチューリップの妖精と女王様に呼びかけてなきました。
11 『トルコの広場』
©️Yoko Yamamoto
カオリは何日もかけて宮殿のすべての部屋を鑑賞し、最後に塔のてっぺんに登りました。
塔から見おろした海を見て、バナナが海におっこちたことを思い出しました。
バナナは、トルコ行の船の上から宮殿を見つけて思いました。
宮殿の屋根はキューコンのカタチをしています。
きっとカオリはあそこにいるにちがいないと。
トルコのイスタンブールには、アヤソフィアという世界遺産の建物があります。
私が旅をした時は、博物館でした。
6C東ローマ帝国時代にキリスト教正教会の大聖堂としての建設を起源として、
15Cからはイスラム教のモスクとなり、20Cに博物館になりました。
2つの宗教の様式が重なっている建物は、いつも夕陽に輝いているように真赤でした。
内部の壁面全部にイスラム文字が描かれていましたが、
修復中の柱の上部のイスラム文字の下から、
金髪でブルーの瞳をした天使が顔をのぞかせた光景は忘れられません。
まるで、止まっていた時間が動き出したような不思議な気持ちになりました。
ドーム状の屋根のカタチをキューコンと見立てると、
カオリとバナナが出会う絶好の場所だと思ったのです。
さて、やっとカオリとバナナは出会えることになりました。よかった。
10 『トルコのさみしい王様』
©️Yoko Yamamoto
トルコの宮殿は天井が高いので、カオリは昼はキューコンチョーに乗って見物。
夜はキューコンチョーがベッドです。さみしくなんかないと強がっています。
そんな中、さみしそうな顔をした王様の肖像画をみつけました。
王様のターバンはチューリップのお花みたい。
王様の椅子もチューリップの模様だと気がつきました。
チューリップが大好きだったのかしら?でもどうしてさみしい顔をしているの?
とカオリは王様にささやきかけました。
トルコのチューリップのことを調べていたら、
オスマン帝国の歴代君主の肖像画をみつけました。
13Cの第1代オスマン1世から、18Cのマフムト2世までの30代にわたり、
王様は白い立派なターバンを戴冠した姿で描かれています。
ターバンを、白いチューリップが赤いチューリップを抱いた姿だと考えたとたん、
物語がまた動きだしました。
肖像画の中で15Cの第7代メフメト2世は、
コンスタンティノープル(イスタンブール)を攻略して
ビザンツ帝国(東ローマ帝国)を滅ぼしてオスマン帝国を広げたことで有名ですが、
彼も同じターバンを頭にのせて、手には小さなバラの花を持ち、その香りをかいでいます。
りりしい顔をしていますが、瞳には哀愁が感じられました。
で、王様とチューリップの関係を想像してみたくなりました。
モデルは第11代セリム2世です。やさしくてさみしそうな顔の秘密とは?
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年8月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年8月18日のテーマは「植物のマナー」星野博美さんです。
9 『ものしりカカオ王子』
©️Yoko Yamamoto
やしの実のまねをして南の島に流れついたバナナは、こざるのセンとダンスに夢中。
ずいぶんと上手になった頃、バナナはキューコンチョーから海におっこちたことを思い出しました。
キューコンチョーは、トルコまでヒトットビーってないていました。
カオリはトルコにいったのかしら。トルコってとおいところ?
とセンに聞くと、ものしりのカカオ王子のところにつれていってくれました。
南の島はカカオ王国でした。
あいさつをすると、王子はバナナという名前を聞いて、
カカオ王国は、バナナの木がつくるこかげに守られているので、
カカオがおいしくそだつことを教えてくれました。
だからカカオはチョコレートになれるのです。
チョコレートはカオリの大好物、バナナはカオリに会いたくなりました。
すると王子はカカオをはこぶトルコゆきの船にバナナをのせてくれたのです。さて出航!
バナナとカカオとトルコとカオリが結びつきました。
このようなアリスの連想ゲームは大好きです。
8 『カオリとトルコのタイル』
©️Yoko Yamamoto
キューコンチョーはトルコまでヒトットビ。
カオリをトルコの宮殿の中庭におろしました。
キューコンチョーがそっと頭を下げると、
ターバンがくるくるとほどけてジュータンの道になりました。
冬なので庭はさみしそうでしたが、宮殿の中はタイルに描かれたチューリップの絵で満たされていました。
カオリはタイルに描かれたチューリップの中に白いチューリップを見つけ、妖精のシンシアだと感じ、
赤いチューリップは森に春をつれてくるチューリップの女王ラーレだと思うと、不思議な気持ちになったのです。
そして、ラーレとはトルコ語でチューリップという言葉だと知りました。
私も10年前にトルコのイスタンブールでたくさんのチューリップ模様を見つけた時、
なぜか神聖な気分になったことが、この物語の入り口になりました。
特にブルーモスクの礼拝堂の2階には、女性専用の部屋があり、
壁全体が様々なチューリップ柄のタイルで埋めつくされて圧倒されました。
宮殿のモデルはもちろんトプカプ宮殿です。
7 『バナナとこざるのセン』
©️Yoko Yamamoto
バナナの木に登り、バナナちゃんを見つけたのはこざるのセン。
バナナセンボンタベタイヨーがモットーです。
センのモデルは友人の小説家石田千さんです。
手足と首の長いヒョロリとした身体が彼女の特徴。
また勝手にイメージを使いました。
南の島での楽しい生活は、言葉の通じない世界が必要。
友だちとの身振り手振りの問答を描くことで、
バナナちゃんのまずの不安は消えますね。
バナナの房を腰にぐるりとまいて踊るこざるのセンは、
1990年に版画にした黒人ダンサー、ジョセフィン・ベイカーがモデルです。
アメリカ出身のジャズ歌手・女優のベイカーは、
1925年からフランスでチャールストンを踊りました。
腰にバナナをぐるりとまいただけの姿で、黒いヴィーナスと呼ばれていました。
詩人ボードレールと小説家ヘミングウェイが、
ありのままの姿の彼女に熱狂したそうです。美の女神だったのですね。
こざるのセンは、エレガントに描きました。
バナナは、ナンボン食べたのかしら?
6 『海とジャワ島』
©️Yoko Yamamoto
キューコンチョーのターバンの中で目を覚ましたカオリとバナナ。
そっとターバンのすみっこをあけました。
そのとき突風が吹いて、バナナは海に落下。
カオリはターバンにしがみついていました。
キューコンチョーはキューコーカしましたが、見つけられずに、
かなしい声で「トルコまでひとっとびー」と鳴いて飛び去りました。
バナナはキューコンですから、プカプカ水に浮かび、南の島に流れついたのです。
このシーンを思い浮かべ、描きながら
島崎藤村の詩、「椰子の実」を歌っておりました。
「名も知らぬ遠き島より流れ寄る 椰子の実一つ……いずれの日にか故国(くに)に帰らん」
バナナを見つけたのは、バナナの木の上のこざるでした。
バナナはキューコンの名前ですが、南の島の看板でもあります。
相性が良さそうです。