TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜詩画集プラテーロとわたし〜
26 『ノスタルジア』
©Yoko Yamamoto
プラテーロの優しい悲しげな鳴き声が
よく晴れた西の空に聞こえてくる。いつも、いつまでも。
プラテーロと一緒にみたものすべては
いまもプラテーロが見ている。
草花もくたびれたロバの群れも、きっと見ている。
26 『ノスタルジア』
©Yoko Yamamoto
プラテーロの優しい悲しげな鳴き声が
よく晴れた西の空に聞こえてくる。いつも、いつまでも。
プラテーロと一緒にみたものすべては
いまもプラテーロが見ている。
草花もくたびれたロバの群れも、きっと見ている。
25 『死』
©Yoko Yamamoto
「しんとした厩。光りながら飛んでいた。
小さな窓からさす光の中を。美しい三色の蝶がただ一羽。」
プラテーロは死んでいた。
四つの脚は硬く血の気をなくし、天をさしていた。
最も美しい言葉とリズムとあっけない死。
プラテーロの魂のカタチは、プラテーロのカタチにした。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年6月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年7月7日のテーマは「金銀すなご一粒のマナー」恩田侑布子さんです。
24 『カーニバル』
©Yoko Yamamoto
日暮れ時のカーニバル。寒い。
子供たちは、ロバの鳴き真似をしながら、彼を鳴かせようと
プラテーロを囲んで回りつづけている。
男らしく、逃げ出すプラテーロ。でもプラテーロは泣きべそをかいてしまった。
ロバは鳴くけれど泣かないのに。
アラベスク模様の馬飾りがすべりおちた。
私はモロッコのフェズで見つけたタイル模様がバラバラになるところをイメージした。
プラテーロのけりあげた後ろ足は、今までの版画のどこかにかくれていますよ。
23 『回復』
©Yoko Yamamoto
インティメイトな時は「冷たく 同時に暖かく 永遠の輝きに満ちている」
ヒメネスは「療養の部屋の中」でクリスマスの夜の通りの音を聞いている。
そして想像をする。
「栗を焼く煙と 厩から立ち上る湯気 平和な暖炉の息づかいに包まれている町」を。
プラテーロの鳴き声を遠くに感じながら、思い浮かべては感動する。親密な時を。
22 『ジプシーたち』
©Yoko Yamamoto
この詩のはじまり。大萩さんのギターは力強いジプシーのロマ音楽の拍子を奏でる。
その音に乗って歩くたくましい女性。
冬の「赤銅色の陽の光の中」町の中心へと道を降りてくる女性。
その存在の強さを引き立てているのは、
静かにジプシーの女性の到来をかぎつけているプラテーロ。
21 『十一月の田園詩』
©Yoko Yamamoto
たそがれ時、プラテーロは背に松の枝をふわりと積んで野原から戻ってくる。
「規則正しい歩調」「繊細で軽やかな歩調」「謙虚で穏やかなロバ」の神聖な姿を描く。
左のプラテーロ
切り抜き銅版の四つの足の凸凹したカタチで歩調を表現してみる。
右のプラテーロ
額から鼻先へ続くラインが地面へと続いてゆく。
張子人形の首の運動を思い出して、穏やかさを持ったラインで
包まれるプラテーロを描いてみた。
20 『カナリアが死んだ』
©Yoko Yamamoto
「黄色いアイリスの萎んだ花びら」のようになって、
銀の鳥籠の中で死んでいたカナリア。
九月のこと。子供たちが世話をしていたカナリア。
満月の夜だ。庭の土に埋めてあげよう。皆で。
カナリアは死んだ。ただそれだけなんだ。
私も死んだ鳥を掌にのせた記憶があります。
でも、あまりの軽さに驚き特別な気持ちになりました。
19 『月』
©Yoko Yamamoto
「ゆっくりぼんやりと戻ってきた」プラテーロ。
桶にうつりこんだ星と一緒に二杯も水をのんだあとに。
九月のなまあたたかい香りのする月の下。
月を見上げたプラテーロは耳を片方づつふった。
絵からその固く小さな音が聞こえたらよいのだけれど。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年6月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年6月23日のテーマは「在宅のマナー」星野博美さんです。