TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜詩画集プラテーロとわたし〜
8 『春』
©Yoko Yamamoto
朝のまどろみのとき。
小鳥たちの自由なコンサートの様子を詩はとらえています。
「朝がきた!太陽が大地に金と銀の喜びをまき散らす」と波多野さんは訳しています。
そうして「野原は鼓動しわき立ち叫びはじめる、新しい健やかな命」の誕生する春ですね。
8 『春』
©Yoko Yamamoto
朝のまどろみのとき。
小鳥たちの自由なコンサートの様子を詩はとらえています。
「朝がきた!太陽が大地に金と銀の喜びをまき散らす」と波多野さんは訳しています。
そうして「野原は鼓動しわき立ち叫びはじめる、新しい健やかな命」の誕生する春ですね。
7 『戻り道』
©Yoko Yamamoto
ヒメネスのかぶっている帽子は詩の中からイメージして描いたのですが、
波多野さんがこの絵をみた時、驚いた声で「わたしのイメージの中の帽子と一緒!」と発しました。
絵を描く喜びを実感した一瞬でした。
ヒメネスが手に持っているのはアイリス。
あたたかく爽やかな夜がふけゆく中ますます香りは強くなり、それを暗闇の香りとヒメネスはたとえます。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年5月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年5月26日のテーマは「エッセンシャルワーカーのマナー」星野博美さんです。
6 『つばめ』
©Yoko Yamamoto
モンテマヨールにやってきたつばめは聖母の絵姿のところに巣をつくりました。
でも、今の地球のように気候変動がおきていたのでしょうか。
オレンジの花がつぼみのまましおれるくらいとても寒くて、
つばめが死んでしまわないかしらとプラテーロは心配しています。
モンテマヨールの聖母は波多野睦美さんに似てしまいました。
5 『お告げの鐘』
©Yoko Yamamoto
海外を旅すると、ある時刻に鐘の音に包まれることがあります。
ヒメネスはその音をバラの花にたとえました。
鐘の音に包まれた時、すべては輪かくを失ない優しくなります。
プラテーロの瞳のように。
4 『エル・ロコ 狂った男』
©Yoko Yamamoto
狂った男ってプラテーロに乗ったヒメネスのこと。
子供たちは奇妙な男がロバに乗っている姿に向ってくりかえし叫びます。エル・ロコ と。
叫びはこだまとなって野原や空にひびき、そして静けさと安らぎがやってくるのです。
声のひびきを描いてみたいと思いました。
TOPICS
波多野睦美さんがフェイスブックでこの本についてのコメントをされました。
ご友人の作曲家笠松秦洋さんとの会話が勉強になります。
お二人のお許しを得て再掲載します。 山本容子
『病気を描くシェイクスピア エリザベス朝における医療と生活』
波多野 睦美
「堀田饒(ほったにぎし)著『病気を描くシェイクスピア〜エリザベス朝における医療と生活』装丁の版画は山本容子さん。久しぶりに開いてやっぱり見てみた『ペスト』の頁。1592年にエリザベス1世が出した流行阻止のための命令内容が、今とあんまり変わらない。このクリアな指示の感じ、メルケル首相を思い出す!」
笠松 秦洋
「ロミオとジュリエットも、ペスト禍のヴェローナでの出来事として描かれていて、それを当時の人は十分意識してこれを演じ、見ていた、ということですね。今考えると、あの、独特の息詰まり感、ジュリエットの父が結婚を急がせようとする様子、若い二人の疾走ぶり、マキューシオの憂鬱、ティヴォルドの苛立ち、全てが腑に落ちる気がします。」
波多野 睦美
「ほんとに。落ちます。劇中では『移動の禁止』『交通の遮断』によってロミオ宛の重要な手紙が届くのが遅れる。観ていたロンドンの人々は我が事として納得したのでしょうね。」
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波多野さんから堀田先生へのメッセージです。
「どこから開いても興味深い本です」
この本はホーム社/集英社刊です。巻末の付録が、凄いです。
シェイクスピアにまつわる切手のカラーコレクション。もちろん堀田先生の。ご覧あれ!
3 『夕暮れの遊び』
©Yoko Yamamoto
スペイン語で貧しい少女が歌っています。闇をぬって流れる水晶の糸のような声で。
仲間にきかせているのでお姫さま気どりだとか。
「プラテーロとわたし」のCDには波多野睦美さんの歌う澄んだ声が流れます。
2 『白い蝶』
©Yoko Yamamoto
夜がきました。紫色の靄がかかっています。緑と藤色の光が教会の塔のむこうに漂っています。
一日の疲れを感じる時。でも詩心である白い蝶は、胸一杯につまっていることでしょう。
1 『プラテーロ』
©Yoko Yamamoto
プラテーロは、詩人ヒメネスの相棒のロバ。彼がプラテーロと呼ぶと駆けよってきます。
小さな子供のように甘えん坊ですが、芯は強くて鋼のよう。そして月のような銀の色をしています。
詩と音楽を包みこむ銅版画
刈谷政則 (編集者)
ノーベル文学賞を受賞したフアン・ラモン・ヒメネス(1881-1958)というスペインの詩人をご存知でしょうか。彼の代表作、ロバと詩人の感動的なエレジー『プラテーロとわたし』は世界中で愛されている散文詩集です。このすぐれた音楽性と豊かな色彩にあふれた作品には、イタリア生まれの作曲家カステルヌオーヴォ=テデスコが作曲したギターと朗読のための28曲があります。それが今回の企画の出発点でした。
メゾソプラノ歌手・波多野睦美さんの〈音楽に合わせた朗読〉にふさわしい斬新な日本語訳、そして、その世界を包みこむような山本容子さんの銅版画。容子さんは今回の仕事についてこう書いています――「大萩康司さんのギターの演奏と波多野睦美さんの朗読を聴きながら、銅版をオレンジ色の絵の具を塗布したキャンバスに刷った。オレンジ色のベースは、ヒメネスとプラテーロの素肌のあたたかさと、太陽があたためた大地の色、信頼関係の色。・・・・・・(詩人とロバが)時空を飛び越えた」。
こうして〈詩と音楽と絵〉が一体になった素晴らしい詩画集が生まれました。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年4月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年5月12日のテーマは「薔薇をささげるマナー」恩田侑布子さんです。
皆様
連休も明けましたね。いかがお過ごしでしょうか。
今年は中止や延期のお知らせが続いていてとても残念なことでした。
約一ヶ月アトリエにこもって制作したり音楽を聴いたり掃除をしておりました。
ニュースを見ては、お祈りをして、感謝をしておりました。
そんな中、波多野睦美さんが「プラテーロとわたし」の詩の中から
新しく一編の詩を訳して下さいました。「パセリの冠」というタイトルです。
この詩はテデスコが作曲をしなかったので、本の中には入っていません。
でもわたしの一番好きな詩だと波多野さんに伝えていたので、
嬉しいプレゼントをいただいたことになりました。早速新作の版画を
制作しようと思っています。
毎日少しずつ硬くなってゆく心を軟らかくする努力もしなくては
胸一杯に新鮮な空気も入ってきませんね。
深呼吸を誘うような版画制作を続けてゆきます。
しばらくのあいだは少しつつましく、でもそのことを楽しんで生活しましょう。
お元気で。
2020.5.7 山本容子
ウェブサイトトップに使用されている作品は、『詩画集プラテーロとわたし』より「ロンサール」です。
イメージサイズ:26×36cm 2019年制作