LUCAS MUSEUM|山本容子美術館 

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TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 05.2020


8 『ありさんのぎょうれつがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


昔、メキシコの美術館で「子供のための展覧会」を見た。
テーマは絵本だったが、展示がおもしろかった。
広くて天井の高い美術館の中に、子供のサイズに縮小した展示室が作られていた。
入り口も廊下も壁面も、子供にはピッタリのサイズ。
だから、彼らが見たい絵は彼らの目線に合っていた。大人は少し腰をかがめて見る。
天井もついていたから私は不思議の国アリスになったように感じた。

たしかに、子供の頃は地面に近い生活をしていた。だから犬とも同類だったのだ。
ありやバッタや石ころや四つ葉のクローバー、そして海では貝殻の美しさにうっとりできたのだった。
その中でも私のお気に入りはありの行列。
どこからどこへゆくのかが知りたくて、ずーっとながめていたことを思い出す。
そのうち行列を作らせたくなって、台所の砂糖壺までの道をつけたら、
いつも台所に立っていたキレイ好きのまさおばあさんは、ひっくりかえった。
エサをあげたのにと不思議な気持ちになった。

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October 29.2020


7 『チューリップがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


庭の真中に母のチューリップ畑があった。
母がとても大事にしていたことは、花が咲くと毎日の手入れを鼻歌まじりでしていた事からもわかっていた。
「さいた さいた チューリップのはなが
ならんだ ならんだ あか しろ きいろ」
風にふわりふわり花をゆらしながら立っているチューリップを見ていると、とてもしあわせな気分になった。
大きくなって、母から、私のはじめての言葉がチューリップを見て
「まあチレイ!」という感動の言葉だったと聞いた時も、しあわせな気分は増幅されたのだったが、
と同時に、どうしてそんなに残酷なことをしたのだろうか。という事件を思い出す。
立派に咲いたチューリップを見ながら、同時に枯れた花を切りとる母の姿も見ていたのだった。
そしてやってしまった。
一番キレイなチューリップの花のところをハサミでチョキチョキ切りとったのだ。
「だって茶色くなるのはかわいそう」というのが私の理由だったが、
チューリップの花のところばかり集めてしまったことを見て、母は言葉もでなかったとか。

2年前に出版した「チューリップ畑をつまさきで」という絵本を描いていた時も、
このエピソードが頭の中に見えかくれしていたことを思い出す。
きっと死ぬまで続く「チューリップとわたし」の関係なのね。

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Posted by: lucas

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October 22.2020


6 『おふろがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


大事件の話です。
おまんじゅう事件のおばあさんはまささんといいます。
キレイ好きなまささんは、おふろがおすきでした。
まずは日本手拭をギュッとかたくしぼり、垢こすりをします。
江戸っ子のまささんの子供の頃からの習慣だったことは後で知り、その健康法に驚きました。
が、痛かったことは憶えています。でも、湯船の中で手拭をつかってあぶくをとじこめる遊びが大好きだったので、
まささんとおふろに入るのが好きでした。しっかりあたたまるまではいっていることが大切だったのでしょう。
湯船にはいろんなものがプカプカ浮いていました。

ある時、気持ちが良くなって湯船でウンチをしてしまったのです。
ウンチもプカリプクリと浮かんでいたそううですが、
おまささんはビックリして早速得意の風呂掃除をしたという事件。
なのですが、この絵本を読んだ子供が、
「おこちゃんのまねをして困っています」という手紙が出版社に届き、
笑い話の手紙の中に本気で怒っている母親からの「このページをカットして下さい!」という
エスカレートした手紙まであって、当時の編集者との相談話は複雑でした。
だって、作者としては、子供に直接私の話が届いた喜びの証となった事件だったからです。
赤ちゃんも満ちたりた気分になった時、お湯の中でウンチをするでしょう。
幸せのバロメータですね、と返事をしました。

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Posted by: lucas

TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画

October 20.2020

2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。

2020年9月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。


©Yoko Yamamoto

読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年10月20日のテーマは「フォークとスプーンマナー」星野博美さんです。

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October 15.2020


5 『いけのこいがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


日本庭園で泳ぐ鯉を見ると、今でもこのシーンがよみがえり、少し恐怖をおぼえる。
美しい魚なのにコワイのだ。
父方の祖父は江戸前鮨を大阪に紹介した人として鮨辞典に載っている。
彼は晩年山荘を建てて造園を趣味としていたと母から聞いた。
幼ない私は父母と一緒にそこで暮らしていたとか。妹が生まれる頃の話。
錦鯉を池に泳がせ、エサをあげる。
おじいさんのそばに座っていた私をよろこばせようとヒザに抱き、エサのバケツを持たせたとたん、
エサは池にバサリと落ちてゆき、コイがエイヤッと飛び出してきた。
お口のおおきさにビックリしてひっくりかえったのだけど、
またう〜んとうなって気を失なったので、おじいさんもヒックリかえった話。

予想もつかないビックリは、色とりどりのコイの色と美しい風景と共に今も心に宿っている。
「食べず嫌い」という言葉があるが、私はコイは食べられません。
今も。このおじいさんもいつも和服でした。

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October 08.2020


4 『おまんじゅうがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


父方の祖母登場。
いつも和服を着ているおばあさんはキレイ好きで洗濯、掃除が得意。甘いお菓子が大好きだった。
堺はお茶菓子の名所なので、小豆のこしあんの常用まんじゅうは欠かしたことがなかった。
またこれも不思議な縁だが、堺市に仕事に行くと必ずいただくお土産が「大鏡」という白のこしあんの和菓子で、
私はこれを見たとたんおばあさんの茶卓にワープしたことがあった。
おばあさんはこしあんが好きだったのだ。

なぜ和菓子をこんなに憶えているのだろうか。母に聞くと、母の教育方針がみてとれた。
私達の虫歯予防のために、あんこは御法度だった。という。
チョコレートは常用のお菓子になりがたい時代です。
そんなことをふと忘れたおばあさんは、私の口に白くて小さいおまんじゅうをひとついれてくれた。
はじめて甘いお菓子をたべた私は、おいちいーといってまた気を失ったとか。

後日談の、おぜんざいを友達の家ではじめて食べて母にこう言った。
「お豆のおみそ汁を作って!」と。
おぜんざいの存在も言葉も知らない時代があった。

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TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画

October 06.2020

2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。

2020年8月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。


©Yoko Yamamoto

読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年10月6日のテーマは「現実と仮想、往還のマナー」恩田侑布子さんです。

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October 01.2020


3 『キューピー人形がすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


いよいよ家族の登場。
私と妹は堺市大浜海岸のそばで育った。
大家族で、親戚がよく集まり、大人達に囲まれて私はともかくおしゃべりで、妹は無口だった。
まずは母方の祖父。奈良に住んでいた彼は洋行帰りのダンディーなおじいさん。
夏の麻のスーツとハット姿が似合っていた。
おばあさんとは蓄音器をかけてダンスを踊っていたと、母から聞かされていた。

2歳の頃、昼寝をしている時に、お土産のキューピー人形を小さいのから一番大きいのまで7個買ってきて、
私が目を覚ますのを待っていたエピソードは有名。
キューピー人形を抱いてねていたら、起きるとたくさんのキューピー人形に囲まれていたので
びっくりしてう〜んと気を失なったとか。
私のはじめてのビックリヒックリかえったお話。

そういえば、はじめて美術館に連れていってくれたのも彼だった。
そして、京都市立美大の門前の画材屋でスケッチブックと絵の具を買ってきてくれた。
美大への道をつけてくれたのかしら。

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September 24.2020


2 『こいぬがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


白黒写真のアルバムには、堺市の大浜海岸で遊ぶ姿が、毎年貼られている。
海と砂場、ここで手に入れるモノは大切な宝物だった。
現在は埋め立てられて、海岸は遊泳場ではなくなった。
今の私は毎年、堺市の依頼で中学生のアートクラブグランプリという
アート作品の審査員としてこの場所に通っている。
この仕事が海浜工業地帯に眠っている子供の頃の記憶を思い出す機会になっているので、
巡り合わせた時間に不思議な思いを抱く。

私にはマーコという妹がいるが、
今は消えさった海の近くの南海野球場の話が出来る少ない話し相手だ。
その球場は、子犬の捨て場所でもあった。
私の遊び相手はスピッツのゴロー。生まれた時からの世話役だった。
夕方、ゴローと海から帰る時、ワンピースのすそを広げて子犬をひろって帰っては、
家族に問題を運んでいた。

絵本の絵を見ると白いスピッツのゴローは、今、横にいる、
ラブラドールのルカにそっくりで、びっくりひっくりかえった。

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TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

September 17.2020


1 『びっくりするのが好きなのね』


©️Yoko Yamamoto


「おこちゃん」というのは、幼い私が「ようこ」という名を「よおこ」と覚えて、
自分のことを呼ぶのに「よおこ」は長いので「おこ」ちゃんと言ったことからはじまった呼び名。
だということを母から聞いた。

絵本「おこちゃん」は母との日常問答から生まれた。
合わせて白黒写真の誕生からのアルバムを繰って母に質問した。
そんなエピソードの数々を使って、子供の頃の日常を描いた。
ただし、見開きページに描く絵と言葉が一体感をもち、肉声のような体温を伝えたいと思った。
それで歌いながら読んでほしいと、言葉にリズムをもたせることにした。
だから、満3歳から習った童謡の曲を下敷きにしたのだった。
子供だった人が皆知っている曲を思い出して
「ぞうさん」(まど・みちお 作詞 / 團伊玖磨 作曲)に重ねて言葉をつむいでいった。

まずは、おこちゃんの顔の説明からはじめたのだけど、
かあさん、とうさん、そして家族の顔を思いうかべると、
皆どこか似ていて性格と共通する点の多いことに驚いて、
ファミリーを思い出すと必ず「びっくり ひっくりかえるエピソード」を書きとめていった。
ひとつひとつのエピソードはおこちゃんとファミリーの合作だ。
大家族で暮らしていた大阪堺市の海のそばの一軒家での出来事だった。

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