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05月の記事一覧

TITLE:【Event】コラム 子どもと大人 ギャラリーツアー

May 13.2025


シリーズ:赤毛のアン  「Snow Queen」 1990  soft-ground  etching, gouache

子どもと大人 ギャラリーツアー
4月26日(土)に展覧会場に子どもと大人のカップルを招き、ギャラリーツアーをしました。児童文学の展示作品を子どもたちと観ながら話をしたのです。結論を先にお伝えしますと、子どもの頃の私と相談をしながらの時間でしたが、とても楽しい体験になりました。

このツアーは念願のイベントです。きっかけは15年前にスウェーデンで「アートインホスピタル」の現場を取材したとき「子どもの病院」で教えられた事でした。そこでは、患者の子どもと保護者の大人が共通の話題で対話することがお互いの「薬」になるというのです。

たとえばエレベーターの中全体に壁画のように描かれた絵のテーマはスウェーデンの昔話でした。ほとんどの大人はストーリーを知っています。この話を子どもに聞かせながら診療室までの廊下を歩くと、この時間が子どもと大人のリレーションシップを生み出す種になるというのでした。

確かに子どもと大人が、共に興味を持つ話題は、世代が離れるほど難しくなりがちですが「お話が好きな子ども」と「お話が好きだった子どもだった大人」の間では世代を越えても対話が出来るものです。

私の描いた絵で物語がわかるのか心配でしたが、手を挙げて「赤毛のアン」がいます。と答えてくれた女の子がいました。

ほっとしましたよ。ありがとう。 山本容子


鏡の国のアリスのギャラリートーク写真


オーディオを聴いている三歳の子ども

Category: Event
Posted by: lucas

TITLE:【Others】コラム 鏡の国のアリス

May 13.2025

コラム
鏡の国のアリス


「白雪姫」を絵本にするのは難しかった。なぜなら、読みはじめたとたん“七人の小人”は「ハイホー、ハイホー」と頭の中を歌いながら行進する。あの小太りの愛らしい姿で。「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは、だあれ?」と鏡をのぞきこむ“まま母”の強烈な顔。物語はすでに子供の頃に獲得したイメージで一杯になっていたのだ。追い出さなくてはいけない。その方法を思いつく。それは、思い出せない登場人物を探すこと。結果、重要な役割なのにイメージ出来ないのは“かりうど”だった。“まま母”の命令に背き、“白雪姫”を助けた恩人。正義感の強い男。まずは彼の顔を描いてみよう。  この時期、私はチェコの旅から帰国したばかりだった。旅の目的は、カレル・チャペックの家(現在は博物館)を訪ねること。彼は作家であり、ジャーナリストで園芸を好み、戦争を憎んだ人。民衆新聞の各欄に、コラム、随筆、寓話と文体を変えながら記事を担当し、ペンでファシズムに対抗しようとしたヒューマニスト。著書「コラムの闘争」を読んだ私は、ウィットにあふれ、ユーモアに包まれた文章に心を奪われていた。本の最後の「ごあいさつ」というコラムの、国は違ってもあいさつをする相手をイメージすることが出来れば、戦争は食い止めることが出来る。というメッセージは強い。優しくて強い人、カレル・チャペックを“かりうど”にしようと思いついた。顔は、画家の兄ヨゼフ・チャペックのキュービズムの作品にしてみよう。
こうして誕生した“かりうど”を物語の真中に置くと、彼に命令する“まま母”が生まれ、“白雪姫”を助ける“七人の小人”が、ギクシャクと画面に登場したのだった。
お城も家具も衣装も、チェコキュービズムのスタイルにした「白雪姫」はこのようにして誕生した。

キャロルの「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」は、94~2010年にかけて制作し続けているが、今回その全てを展示してみて、まだまだ続きを描いてゆきたいと思った。謎の多い物語には、その謎を解きながら、伴走する喜びが隠されている。「鏡の国のアリス」は特に、チェスゲームのルールが解らないと物語が読み解けない仕組みになっているのだ。私は、物語を読み進めながら、チェス盤に旅に出たアリスをどうしても、鏡を通り抜けたアリスの家に連れて帰りたいと思い、チェス盤の4マス目の真中に鏡を出現させてほっとしているが、この読み方、そしてイメージの捉え方を楽しんでほしいと願っている。


山本容子


「Tweedledum and Tweedledee」2010年、ソフトグランド・エッチング、手彩、2839.5cm

Category: Exhibition
Posted by: lucas



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