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11月の記事一覧

TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 26.2020


11 『ハイヒールがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


ハイヒールは大人の女性のくつ。あこがれだった。
わたしは「おしゃまさん」とよばれていて、おでかけの前にヘアアイロンで髪にくるくるを作ってもらうと、
母のヘアスタイルになったようで嬉しかった。

昔は今より内と外で着るものの区別がハッキリしていたように思う。
父は外から帰ってくると着物に着替えていたし、母は外出の時、自分で仕立てた洋服を着て、ハイヒールをはいた。
合わせてバックを持つと、おでかけだ。わたしはこの支度の時間がウキウキしていて好きだった。
興奮のあまり、母のハイヒールに足を突っこんでかかとを鳴らして歩いていたらすごくおこられた。
ハイヒールは大切な靴。かかとがいたむと大変なのだ。

ハイヒールの魅力はかかとが高いということを発見した日、
わたしは庭履きの木の下駄に、くぎを打つとハイヒールになる!と思いついたのだった。
祖母が「この子はテサキがキヨウだね」と言っていたとおり、
くぎを打ち終えるとすべり台のようなハイヒールが誕生したのだった。
カタカタ、ゴトゴト音を出した下駄は、母の悲鳴と共にゴミ箱行き。
だってくぎは歩くたびに表面に出てきていたからだ。
思いつきは危険と共にあると知ったのだったが、思いつき事件は続いた。

Category: Gallery
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TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画

November 24.2020

2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。

2020年9月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。


©Yoko Yamamoto

読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年11月24日のテーマは「無駄話のマナー」星野博美さんです。

Category: Others
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TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 19.2020


10 『おえかきがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


母方の祖父は絵画鑑賞が趣味で、展覧会によく連れていってくれた。
私の楽しみは帰り道の天丼やうなぎだったのだけど、美術館のトイレの場所はしっかり覚えた。
父はというと、子供の頃先生にこう言われたという。
「犬ならもっと犬らしく描きなさい」
父は、「本当は馬を描いたんやけど」と言っていた。

私は絵を描くのは好きだった。祖父に買ってもらったクレヨン、クレパス、水彩絵の具。
どれもみんな色がキレイだったから。
でも、絵は習いに行かなかった。
3才からはじめた童謡、日本舞踊、バレエ、ピアノ、三味線と習い事の歴史は続くが、絵画教室はスケジュールになかった。
まわりの大人の趣味の世界が多様だったので、その時々の大人にあわせて私は習い事に励んでいた。
皆絵を描くのは苦手だったのね。
この事が「緑のキリン事件」をおこしたのだった。

幼稚園の時、動物園でおえかきをしていた。
ら、私は黄色と茶色のキリンを見ながら緑のキリンを描いた。
先生に理由を聞かれて、私は堂々と「だってキリンは草を食べたから」と答えた。
そして童謡を歌ったという。それは、北原白秋の
「赤い鳥小鳥 なぜなぜ赤い。赤い実を食べた。
青い鳥小鳥 なぜなぜ青い。青い実を食べた。」
だからキリンは緑なの。とね!
この事件は、私の美術家人生のはじまりだったかもしれない。

Category: Gallery
Posted by: lucas

TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 12.2020


9 『おせんたくが好きなのね


©️Yoko Yamamoto


作家の三島由紀夫は、母親の産道を通った時の記憶があると言っていた。それから”自分”となったのだという。
私の場合は、このシーンから”わたし”になった。

それは、庭の隅に植えられたいちじくの木の下の水道のある場所だった。
水栓の下には少し大きめの金だらいがあり、色々なものを水洗いする場所。
裁縫の好きな母は、私のパンツを可愛い布で何枚も作っていた。それは私がよくおもらしをするからだった。
おもらしをすると”おしりペンペン”をされていたので、いちじくの木のそばはおそろしい場所だったが、
おこられないようにするために自分でパンツを洗っていちじくの木に干しておく方法を考えついた。
そしておしりは気持ちよく水につけて空を見ていた。
恐怖を回避して満足感にあふれていたその時、”わたし”だと思った!
いちじくの花盛りは、わたしの記憶の第一番目のシーンだった。

洗濯機には、水をしぼるゴムのローラーがついていた。
今の私は鉄のローラーで、銅版画を刷っている。
不思議なイメージの連鎖だ。

Category: Gallery
Posted by: lucas

TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画

November 10.2020

2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。

2020年9月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。


©Yoko Yamamoto

読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年11月10日のテーマは「撒けば芽の出るものを食すマナー」恩田侑布子さんです。

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TITLE:【Others】映画 トルーマン・カポーティ 真実のテープ

November 10.2020



<CAPOTE SUITE>より「From Noon to Moon」1979年



1979年、物語をテーマにして銅版画を制作したいと思った。そこでトルーマン・カポーティの小説「遠い声、遠い部屋」「夜の樹」「ミリアム」「冷血」「ティファニーで朝食を」を読んで24点の作品をつくり、うち10点は「CAPOTE SUITE」として40部のポートフォリオにした。
この展覧会は、1988年に再びカポーティ作品をテーマに作品をつくるきっかけになった。それは現在も刷数を重ねている「おじいさんの思い出」「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」(文藝春秋)の本の仕事だった。

村上春樹さんが訳したこの本は、カポーティの少年時代がテーマになっている。クリスマス三部作だ。ラッキーな編集者との出会いだった。このことが、私を憧れの出版の世界での「Book work」に結びつけてくれた。

さて、今回は「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」というドキュメンタリー映画の公開に合わせて、1979年の銅版画「From noon to moon」がパンフレットに使われている。銅版画にまつわる、なんという幸福な出来事なのだろう。

 

山本容子

 


「カポーティとの対話(1988年 文藝春秋)」の表紙になった作品が、Bunkamuraル・シネマのロビーに展示されています。





「カポーティとの対話」
ローレンス・グローベル著
出版:文藝春秋 1988年出版





『遠い声 遠い部屋』という小説を読み、「From Noon to Moon」という版画を描いた。
疾走するトラックを運転するカポーティ。そのトラックの荷台には「恐るべき子供」としてデビューした
若き肖像を載せてみた。土埃のまい上る道の質感はリアル。だから彼の無垢なる魂の存在が際立つように思った。
「真昼の街(ヌーンシティ)から月(ムーン)への旅」彼の孤独が沁み込んだ映画を観て、また本が読みたくなった。
(「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」劇場パンフレットより)

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TITLE:【Others】映画 トルーマン・カポーティ 真実のテープ

November 06.2020

私が27才の時に追いかけたテーマ、トルーマン・カポーティのドキュメンタリーが全国ロードショーで公開されます。素晴らしい映画です、是非観てください。

カポーティの魅力の秘密は作品群の中に存在している。
彼の孤独が沁み込んだ映画を観て、また本が読みたくなった。(山本容子)


映画公式サイト

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TITLE:【Exhibition】山本容子展『詩画集 プラテーロとわたし』刊行記念

November 06.2020
山本容子展『詩画集 プラテーロとわたし』刊行記念 
-物語に出会いを求めて-
     会期:2020年1月29日(水)~2月10日(月) 営業時間:10時〜20時(最終日は16:00閉場)
     会場:丸善岡山シンフォニービル店 地下1階ギャラリー
              岡山市北区表町1-5-1 TEL 086-233-4640
    〈サイン会のお知らせ〉 2月9日(日) 14:00~15:00
         ※ギャラリーにて対象書籍をお買い上げのお客様先着80名様に
            1月29日(水)より整理券をお渡しいたします。
今展ではキャンバスに銅版で刷った『プラテーロとわたし』の書籍原画全28点をご覧いただくとともに、新作版画、書籍になった版画、関連書籍、CD、グッズ等を販売いたします。 久しぶりの岡山での展覧会になります。是非お出かけくださいますようお待ち申し上げます。

山本容子展『詩画集 プラテーロとわたし』刊行記念 

-物語に出会いを求めて-

会期:2020年11月13日(金)~19日(木)

営業時間:11:00〜20:00(最終日は17:00閉場)

会場:丸善京都本店 B2F MARUZENギャラリー

京都府京都市中京区河原町通三条下ル山崎町251 京都BAL B1-B2F (TEL 075-253-1599)

今展では、キャンバスに銅版で刷った『プラテーロとわたし』の書籍原画全28点をご覧いただくとともに、新作版画、書籍になった版画、関連書籍、CD、グッズ等を販売いたします。是非お出かけくださいますようお待ち申し上げます。



展覧会DM


詩と音楽を包みこむ銅版画

刈谷政則 (編集者)

   ノーベル文学賞を受賞したフアン・ラモン・ヒメネス(1881-1958)というスペインの詩人をご存知でしょうか。彼の代表作、ロバと詩人の感動的なエレジー『プラテーロとわたし』は世界中で愛されている散文詩集です。このすぐれた音楽性と豊かな色彩にあふれた作品には、イタリア生まれの作曲家カステルヌオーヴォ=テデスコが作曲したギターと朗読のための28曲があります。それが今回の企画の出発点でした。

   メゾソプラノ歌手・波多野睦美さんの〈音楽に合わせた朗読〉にふさわしい斬新な日本語訳、そして、その世界を包みこむような山本容子さんの銅版画。容子さんは今回の仕事についてこう書いています――「大萩康司さんのギターの演奏と波多野睦美さんの朗読を聴きながら、銅版をオレンジ色の絵の具を塗布したキャンバスに刷った。オレンジ色のベースは、ヒメネスとプラテーロの素肌のあたたかさと、太陽があたためた大地の色、信頼関係の色。・・・・・・(詩人とロバが)時空を飛び越えた」。

   こうして〈詩と音楽と絵〉が一体になった素晴らしい詩画集が生まれました。


               
新刊書籍                     
『プラテーロとわたし』                                      
 J. R. ヒメネス=作  波多野睦美=訳        
 山本容子の新作銅版画28点を収録         
 A5変型版上製120ページ             
 本体価格1,700円(税別)              
 理論社 
 詳細はこちらより


CD
『プラテーロとわたし』
 マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ
 大萩康司(ギター)
 波多野睦美(メゾソプラノ、朗読)
 定価4,545円(税別)MARCO 001/2 
 MARCO CREATORS/キングインターナショナル
 詳細はこちらより

Category: Exhibition
Posted by: lucas

TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 05.2020


8 『ありさんのぎょうれつがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


昔、メキシコの美術館で「子供のための展覧会」を見た。
テーマは絵本だったが、展示がおもしろかった。
広くて天井の高い美術館の中に、子供のサイズに縮小した展示室が作られていた。
入り口も廊下も壁面も、子供にはピッタリのサイズ。
だから、彼らが見たい絵は彼らの目線に合っていた。大人は少し腰をかがめて見る。
天井もついていたから私は不思議の国アリスになったように感じた。

たしかに、子供の頃は地面に近い生活をしていた。だから犬とも同類だったのだ。
ありやバッタや石ころや四つ葉のクローバー、そして海では貝殻の美しさにうっとりできたのだった。
その中でも私のお気に入りはありの行列。
どこからどこへゆくのかが知りたくて、ずーっとながめていたことを思い出す。
そのうち行列を作らせたくなって、台所の砂糖壺までの道をつけたら、
いつも台所に立っていたキレイ好きのまさおばあさんは、ひっくりかえった。
エサをあげたのにと不思議な気持ちになった。

Category: Gallery
Posted by: lucas



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