TITLE:【Others】「谷川俊太郎のあれやこれや」
魅力全開谷川ワールド
谷川俊太郎さんの没後はじめての本が出版されました。
「谷川俊太郎のあれやこれや」谷川俊太郎作(筑摩書房)
谷川さんは生きていると錯覚します。なので、カバーの絵は谷川さんのポートレートをデッサンしてみました。どれも谷川さん似です。1人だけ宇宙から参加したC3-POがいます。
山本容子
刈谷政則さん編集の自伝風の読む年譜付。
魅力全開谷川ワールド
谷川俊太郎さんの没後はじめての本が出版されました。
「谷川俊太郎のあれやこれや」谷川俊太郎作(筑摩書房)
谷川さんは生きていると錯覚します。なので、カバーの絵は谷川さんのポートレートをデッサンしてみました。どれも谷川さん似です。1人だけ宇宙から参加したC3-POがいます。
山本容子
刈谷政則さん編集の自伝風の読む年譜付。
8ヶ月間の展覧会が終了しました。村上春樹ライブラリーに、秋・冬・春、そして夏の予感のする今まで通った道は、目的地が大学構内ということもあり、毎回若返るような気持ちで歩いていました。
到着すると私の昔の姿に出会います。27歳でカポーティの作品を読みながら何を考えていたのだろう?どうしてこんなモノ描いたのか。記憶をたどっては楽しんでいました。
村上春樹ライブラリーは素晴らしい場所です。海外からの来場者で、いつも生き生きとしていながら、それぞれの世界に籠ることができて静かです。
この展覧会場では、子どもたちとも対話ができました。
古くから作品を観続けてくれた遠方からの人達とも時代を越えて話がはずみました。初めて会った外国の方と写真を撮りながら、お互いの緊張が友情に変化するような気分を味わいました。
とても新鮮な気持ちで敬虔でいられました。
この機会を私に運んで下さった皆様に感謝します。そして道をまだ歩いてゆきたい。未知と出会いたいです。
2025.5.28 山本容子
お世話になった早稲田大学国際文学館のスタッフの方々と。
早稲田大学小野記念講堂にて「プラテーロとわたし」のトークは、ロバートキャンベルさんとしました。
その後、歌と朗読ー波多野睦美さん、ギター演奏ー大萩康司さんと一緒に私の版画が、動きました。
雨の中、来てくださり有難うございました。
国際文学館の展覧会は、早いもので後10日となりました。 是非ご覧いただきたいです。
山本容子
シリーズ:赤毛のアン 「Snow Queen」 1990 soft-ground etching, gouache
子どもと大人 ギャラリーツアー
4月26日(土)に展覧会場に子どもと大人のカップルを招き、ギャラリーツアーをしました。児童文学の展示作品を子どもたちと観ながら話をしたのです。結論を先にお伝えしますと、子どもの頃の私と相談をしながらの時間でしたが、とても楽しい体験になりました。
このツアーは念願のイベントです。きっかけは15年前にスウェーデンで「アートインホスピタル」の現場を取材したとき「子どもの病院」で教えられた事でした。そこでは、患者の子どもと保護者の大人が共通の話題で対話することがお互いの「薬」になるというのです。
たとえばエレベーターの中全体に壁画のように描かれた絵のテーマはスウェーデンの昔話でした。ほとんどの大人はストーリーを知っています。この話を子どもに聞かせながら診療室までの廊下を歩くと、この時間が子どもと大人のリレーションシップを生み出す種になるというのでした。
確かに子どもと大人が、共に興味を持つ話題は、世代が離れるほど難しくなりがちですが「お話が好きな子ども」と「お話が好きだった子どもだった大人」の間では世代を越えても対話が出来るものです。
私の描いた絵で物語がわかるのか心配でしたが、手を挙げて「赤毛のアン」がいます。と答えてくれた女の子がいました。
ほっとしましたよ。ありがとう。 山本容子
鏡の国のアリスのギャラリートーク写真
オーディオを聴いている三歳の子ども
コラム
鏡の国のアリス
キャロルの「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」は、94~2010年にかけて制作し続けているが、今回その全てを展示してみて、まだまだ続きを描いてゆきたいと思った。謎の多い物語には、その謎を解きながら、伴走する喜びが隠されている。「鏡の国のアリス」は特に、チェスゲームのルールが解らないと物語が読み解けない仕組みになっているのだ。私は、物語を読み進めながら、チェス盤に旅に出たアリスをどうしても、鏡を通り抜けたアリスの家に連れて帰りたいと思い、チェス盤の4マス目の真中に鏡を出現させてほっとしているが、この読み方、そしてイメージの捉え方を楽しんでほしいと願っている。
山本容子
「Tweedledum and Tweedledee」2010年、ソフトグランド・エッチング、手彩、2839.5cm
コラム
「白雪姫」の絵本
「白雪姫」を絵本にするのは難しかった。なぜなら、読みはじめたとたん“七人の小人”は「ハイホー、ハイホー」と頭の中を歌いながら行進する。あの小太りの愛らしい姿で。「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは、だあれ?」と鏡をのぞきこむ“まま母”の強烈な顔。物語はすでに子供の頃に獲得したイメージで一杯になっていたのだ。追い出さなくてはいけない。その方法を思いつく。それは、思い出せない登場人物を探すこと。結果、重要な役割なのにイメージ出来ないのは“かりうど”だった。“まま母”の命令に背き、“白雪姫”を助けた恩人。正義感の強い男。まずは彼の顔を描いてみよう。 この時期、私はチェコの旅から帰国したばかりだった。旅の目的は、カレル・チャペックの家(現在は博物館)を訪ねること。彼は作家であり、ジャーナリストで園芸を好み、戦争を憎んだ人。民衆新聞の各欄に、コラム、随筆、寓話と文体を変えながら記事を担当し、ペンでファシズムに対抗しようとしたヒューマニスト。著書「コラムの闘争」を読んだ私は、ウィットにあふれ、ユーモアに包まれた文章に心を奪われていた。本の最後の「ごあいさつ」というコラムの、国は違ってもあいさつをする相手をイメージすることが出来れば、戦争は食い止めることが出来る。というメッセージは強い。優しくて強い人、カレル・チャペックを“かりうど”にしようと思いついた。顔は、画家の兄ヨゼフ・チャペックのキュービズムの作品にしてみよう。
こうして誕生した“かりうど”を物語の真中に置くと、彼に命令する“まま母”が生まれ、“白雪姫”を助ける“七人の小人”が、ギクシャクと画面に登場したのだった。
お城も家具も衣装も、チェコキュービズムのスタイルにした「白雪姫」はこのようにして誕生した。
山本容子
「白雪姫とかりうど」1992年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 20×21.5cm
コラム
アリスの世界の不思議
「アリスの世界」は、つぶやきでできています。アリスはつぶやきながら、世界をグニャリと歪めていく「現在進行形」のところが好きです。たとえば物語の冒頭、時計を持ったウサギを追いかけて、ウサギ穴にゆっくり(「ゆっくり」の上に強調の点4つ)と落ちてゆくアリスは、飼い猫のダイナにエサをあげてこなかったことに気づきます。洞窟には、ダイナのエサになるものはない。はずですが、アリスは洞窟にはコウモリが居ることを思い出し、コウモリはネズミに似ているので、ネコはコウモリを食べるかもしれない。と発想を飛ばすのです、この自分勝手に論点をずらし安心してゆく過程がつぶやきの面白さなのです。もうひとつ、アリスがズンズン大きく姿を変え、訪問した家が破裂しそうになり、エントツからトカゲのビルを弾き出してしまうシーンがありますが、ビルは結局地面にたたきつけられ失神してしまいます。「トカゲの失神シーン」は、描くにはもっとも難しかったのですが、失神した顔が描けた時、私もやったとつぶやきました。ビルの失神シーンさがしてね。
山本容子
「The poor little Lizard, Bill」2008年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 28×39.5cm
Webエクラのオンライン記事にて、早稲田大学村上春樹ライブラリーでのギャラリーツアー(エクラ主催)にご参加いただいた際の様子をご紹介いただきましたので、いくつか抜粋してご紹介いたします。
Web éclat
チームJマダム hidemiさまのブログより
「早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)で開催されている「山本容子版画展」 エクラ華組&チームJマダム 総勢20名でギャラリーツアーに参加。山本容子さんに直接政策秘話などお話いただく貴重な機会となりました。」
階段本棚と B1から2Fまで続く吹き抜けが素敵
「Ⅱ期(3/3〜5/27)では特に「グリム童話」の白雪姫、「赤毛のアン」、「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」など、世界文学や絵本の挿絵作品が150点ほど所狭しと飾られ、作品はどれもカラフルな色使いで、絵本や文庫本も置かれていました。」
世界童話「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」のカラフルな銅版画たち
鏡の国のアリス:2コマ半の鏡の衝立でチェスボードを表現
チームJマダム ぶんかさまのブログより
「ご自身の作品の前で(ここはカポーティの作品について)お話ししてくださる山本容子先生デニムを履きこなす背筋が真っすぐ伸びた美しい立ち姿が先生の「作品と向き合う姿勢」そのままに感じられました」
チームJマダム キャリゆかさまのブログより
「山本容子さんといえば、銅版画で多くの文学作品をモチーフとしたアートを生み出してこられたことで知られている。今回の展示も、トルーマン・カポーティ、『不思議の国のアリス』など「物語」を題材とした作品が並んでいた。その作品ひとつひとつが、彼女自身の人生哲学のように感じられ、非常に印象的であった。
たとえば、こんな言葉があった。
「時代を知るには、その時代の音楽を聴く」
古典文学作品を絵に起こす際、その物語が生まれた“時代の音楽”を聴きながら制作されることもある、という。音楽は耳から入り、感情に作用し、その時代の空気を伝えてくれる。「物語」を「絵」に翻訳する過程において、さらに「音楽」を通じて時代を感じ取るという発想は、表現者としての奥行きの深さを教えてくれるものであった。
彼女の作品は、音楽をモチーフにしたものも多く、その感性の豊かさをあらためて実感させられる。目で見るはずの絵の中から、どこからともなく音楽が聞こえてくる気がするのも、そんな背景があったからなのだ、と驚いた。
「物語」や「音楽」、そして「時間」という目に見えないものを、あたたかな線と静かな色調で“かたち”にしていく山本容子さんの作品は、改めてアートの持つ包容力を感じさせてくれた。」
解説中の山本容子さん!
集英社の世界の文学シリーズ
シェイクスピアのソネット
チームJマダム あきこさまのブログより
「色彩豊かで都会的センスの山本容子さんの作品はいろいろな場で目にし惹かれていました。今回は早稲田大学村上春樹ライブラリーでのギャラリーツアーに参加。魅力的なお人柄にも触れることができた素敵な時間でした。」
サン=テグジュペリの夜間飛行やグリム童話など世界の文学作品
チームJマダム RU美さまのブログより
「すごく丁寧に説明してくださり、参加した皆さんも熱心に耳を傾けたりメモを取っていました。」
チームJマダム ゆーさまのブログより
「開始早々に山本さんが 私は私が感じたものを私らしく表現している そこに私があって、私らしくなければ意味がない とすぐ間近でおっしゃるのを聴いて鳥肌が立つ感覚でした。」
シェークスピアのソネットは、全貌は把握しきれないことから、節穴から覗いた世界として表現されたそうです。
コラム
世界文学の玉手箱
ふと子供だったことを思い出すことがある。
昨年の11月13日に詩人谷川俊太郎さんが亡くなった。「あのひとが来て」という詩画集を作っていた頃を思い出し、彼の初詩集「二十億光年の孤独」を手に取る。この中から二篇の詩を選び絵を描いたのだった。ページをめくる。89ページ「ネロー愛された小さな犬に」の三遍を読み、手が止まった。
いつの間にか、ネロという犬が、ネロという少年に姿を変え、犬のパトラッシュが姿を見せた。心の冷たい世の中で貧しく生きる姿。雪の中の石畳の冷たさ。教会の中の大きな絵。雪の降りしきるクリスマスに、少年と犬が冷たくなっていた光景ーそのすべての冷たさを感じ取った私は、はじめて本を読みながら大きな声を出して泣いた。その本は「フランダースの犬」だった。
子供の頃に出会った物語は、いつもどこかにひょいと顔を出し、感情を揺さぶる。
山本容子
「にんじん Peil de carotte」1994年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 15×10cm
「ピノッキオの冒険 Le adventure di Pinocchio」1994年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 15×10cm
新訳版「哀しいカフェのバラード」刊行記念
山本容子銅版画展
開催日時:2025年2月16日(日)〜3月4日(火)10:00〜17:00
丸善仙台アエル店
サイン会、沢山の方々に並んでいただき感謝です。
新潮社の前田誠一担当編集者との巡回展最後の土地でした。
仙台の芹鍋、驚くほど美しく旨くて来年のたのしみができました。
あと2日。是非ご覧ください。
山本容子